経済統合を進める理由とその効果とは【メリット・デメリット】まとめ

地域統合

本記事では、各国が経済統合を進める理由と効果について簡単にまとめました。

地域統合、経済統合プロセスや、特定の関税同盟を勉強・研究する際の基本的な情報として、少しでも参考になれば幸いです。

経済統合をめぐる議論

伝統的には、経済統合は「自由貿易理論の延長」と捉える形で、加盟国にとっても世界にとっても純粋に良いものとして捉えられてきました(マエッソ(2011))。この考えに基づけば、経済統合は、その加盟国に、自由貿易の場合と同じように、利益を与えます。

しかしながら、この考え方は、1950年にヴァイナーが関税同盟の排他性(加盟国以外の国を排除する現象)を認める説を発表してから変わり始めることとなります。ヴァイナーによれば、関税同盟は、非加盟国に対する排他性と、非加盟が受ける不利益を利用する動きがあり、そのため、関税同盟は必ずしも自由な貿易に向かっていかないのです。こうして考えると、通商同盟を形成する目的は、非同盟国のプレゼンスを意識した経済的・政治的・外交的な競争であるとも言えます。

具体的な効果とは?

一方で、ヴァイナーは、経済統合、とりわけ関税同盟の効果に関し、『静的効果』と『動的効果』に分けて説明しています。

静的効果

 まずはじめに、経済統合の『静的効果』と呼ばれるものについて見ていきましょう。静的効果には、以下の『貿易創出効果』と『貿易転換効果』があります。

(1)貿易創出効果
まず、関税障壁が取り払われることにより、加盟国間の域内の通商を促進する『貿易創出効果』があります。これは、自由貿易が支持される際に一般的に議論されるものと同じように、ポジティブな効果であると考えられます。

(2)貿易転換効果
一方で、非加盟国に対する対外共通関税がかかることにより、本来より効果的・効率的な非加盟国の商品の輸入が阻まれるという『貿易転換効果』も生じ得ます。もちろん、経済的な視点にたてば、これはネガティブな効果です。

したがって、とある関税同盟が(静的効果として)加盟国に良い効果をもたらしているか否か、言い換えれば、関税同盟を形成することが経済的に合理的かどうかは、貿易創出のポジティブな効果と、貿易転換のネガティブな効果のどちらの割合が大きいかに依ります。

動的効果

もう一つの効果はヴァイナーにより『動的効果』と呼ばれており、それは、経済統合は長期的には加盟国の生産能力を高め、競争力を高めることで、その成長に貢献するという効果です。

このプロセスを説明する理論は複数存在します。

(1)伝統的な理論
伝統的な理論は、19世紀はじめにリカードによって提唱された比較優位論』、あるいは『ヘクシャー=オリーンの定理』に基づくものです。つまり、域内の各国が生産システムが合理化され、その生産性の違いに基づく役割分担と商品の効果的な循環により、各国が競争力を高める、という理論です。これは、自由貿易が支持される際の理論と同じものですが、関税同盟の結成が域内そして世界全体に良い効果をもたらすと言えるのは、域内の生産システムの合理化によるメリットが対外共通関税による『貿易転換効果』(本来より効率的な非加盟国との貿易が、対外共通関税によって加盟国との貿易にシフトされること。)のデメリットよりも大きい場合に限ります。

この理論に基づく『動的効果』は、加盟国の経済・産業的優位性が異なることを前提としていて、違いが大きければ大きいほど効果も大きくなるでしょう。

しかしながら、現実には各国は、『産業間貿易』(異なる産業の商品・サービスの貿易)のみではなく、『産業内貿易』(同じ産業の商品・サービスの貿易)も行なっています。近代の複数の研究者が示しているように(クルーグマン(1991)、ロブソン(1998)、シェルバーン(2004)、マエッソ(2011))、前述の伝統的な理論は、この後者の性格の貿易が急速に成長していること十分に説明できていませんでした。そのため、この動きを説明するための別の理論を立てることが重要な問題となりました。

(2)規模の経済
もう一つの説明は『規模の経済』の役割に基づくものです。この説明によれば、経済統合により得られる市場規模の拡大により生産のコストが減少します。つまり、加盟国の企業は、同じやり方で生産された同じ商品の販売を他の加盟国にも広げることで、効率を高めることができます。

(3)商品の差別化
また、商品の違い・個性も、産業内貿易に対するもう一つの説明です。これは、同じシャツの色違いというような、同質の商品をデザインなどで差別化される場合と、大衆車に対する高級車のように、質の違いで差別化される場合があります(千葉(1990))。この種の差別化された商品は、たとえ同じ産業であってもニーズが異なり、衝突せずに売買が拡大する可能性があります。

(4)企業間の刺激・学び
経済統合により域内の企業間に刺激や学びが生まれ、生産性が向上する可能性があります。

自国産業の保護

理論上、各国は、『規模の経済』へのアクセスと、それによる競争力の向上といったポジティブな効果(メリット)を、経済統合により得られると考えられますが、これと向かい合うのが自国産業の保護という一種の保護主義です。

経済統合プロセスにおいて、経済統合の推進と自国産業の保護を天秤にかけ、折り合いをつけていく作業が見られます。この後者(自国産業保護)に重きを置きすぎると、経済統合の歩みは鈍いものになりますが、それぞれの国が、あまり拙速に経済統合を推進できない事情も持っています。

まとめ

経済統合により得られる効果は、経済学的な理論や、政治力学など、様々な視点で勘案され、それが各国が経済統合を進める理由であると言えます。これを、自国産業の保護などと折り合いをつけながらどう進めていけるかは、それぞれの地域統合枠組みによって異なります

上記で見たような基本的な理論を基に、実際の経済統合枠組みがどのように進んでいるか、進んでいないか、見ていくことができると思います。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

参考文献

  • Bela A. Balassa (autor) y R.D. Irwin (editor) (1961), The Theory of Economic Integration, Westport,Greenwood Press.
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  • Chiba, Takao (1990), “Vertical Differentiation and the Effect of Tariff”
  • Coll, Martínez y Carlos, Juan (2001), “Teoría de la Integración Económica”, La Economía de Mercado, virtudes e inconvenientes,.
  • Ishikawa, Jota (2008), “The economic seminar”, No.644.
  • Krugman, Paul (1978), “Increasing Returns, Monopolistic Competition,  and International Trade”.
  • Krugman, Paul y Obstfeld, Maurice (1991), “International Economics: Theory and Policy”.
  • Leibenstein, Harvy (1966), “Allocative Efficiency vs X-Efficiency”, The American Economic Review, vol. 56: 392-415.
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  • Robson, Peter (1998), The Economics of International Integration, London, Routledge .
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