新大陸に到達した「コロン」と世界一周を率いた「マガジャネス」

西語

「マガジャネス海峡」と言ってすぐにわかる日本人は少ないと思いますが、「マゼラン海峡」というと、大西洋と太平洋をつなぐ南米大陸南端の海峡と答えられる人もいるかもしれません。

ウクライナの首都をロシア語読みの「キエフ」ではなく「キーウ」と呼ぶように、世界の人名や地名などは現地の言語およびその発音を尊重することの重要性が改めて認識されていますが、今回は、ラテンアメリカに関するもので、日本語で認識されている名前と現地語が全然違う例を二つ紹介したいと思います。

南米南端の『マガジャネス海峡』

人類で初めて太平洋を横断し、その船団が初めて世界一周を達成したことで知られるフェルディナンド・マゼラン(英語:Ferdinand Magellan)ですが、これは英語読みを日本語の音に変換したもので、同探検者の母国ポルトガル語では「フェルナンド・マガリャーインス」(Fernão de Magalhães)となるし、彼の世界一周計画を成立させたスペインと、現在の「マゼラン海峡」が位置する国(チリ・アルゼンチン)の母語であるスペイン語では「フェルナンド・デ・マガジャネス」(Fernando de Magallanes)となります。

現地語重視の観点からも、また実践的であるという意味からも、「マゼラン」よりも「マジェラン」(英語)、さらには「マガリャーインス」(ポルトガル語)、「マガジャネス」(スペイン語)を知っておいた方が何かとお得だと思われます。

さらに言えば、スペイン語で通常「ジャ」(あるいは「リャ」)と発音する「ll」や「y」は、アルゼンチンでは「シャ」と発音をするので、地理的には、マゼラン海峡もといマガジャネス海峡は「マガシャネス海峡」だ、ということも可能です。(同海峡のことはスペイン語だと”Estrecho de Magallanes”といいます。)

「新大陸」を「発見」した『クリストバル・コロン』

バイキングのカナダ到達(ランス・オ・メドー発見)を傍に置けば、西洋視点では「新大陸」を「発見」したでおなじみの「クリストファー・コロンブス」も、言語によって呼び方がかなり異なります。

現在日本語が一般的に採用している読み方は、マゼラン同様、英語(Cristopher Colombus)を日本語変換したものです。一方で、コロンブスは、その出自は諸説あるものの、一般的にはイタリア・ジェノバ出身で、ポルトガル、スペイン生活を経て、最終的にはスペイン王室との契約でアメリカへの航海を実現したと言われています。帰国後もスペインを拠点とし、同国で没したとされます。

いずれにせよ英語圏の人ではなさそうであることは確かそうで、現地語主義を採用すれば、クリストフォロ・コロンボ(イタリア語:Cristoforo Colombo)、クリストバル・コロン(スペイン語:Cristóbal Colón)という名前を押さえておく方が汎用性が高そうです。

ちなみに

世界一周を初めて達成したといえばマゼラン、というイメージがありますが、同人はスペインを出発し、南米を南下しマゼラン海峡から太平洋を越え、フィリピンで現地人との抗争で死亡しています。つまり、太平洋を初めて横断した、ということは言えますが、世界一周は道半ばで未達成で没しました。

これ自体はある程度知られていますが、船団に最後まで残り、世界一周を達成した人物であるフアン・セバスティアン・エルカノは、あまり知名度が高まっていないように思います。

スペインが船団を率いたマゼラン(ポルトガル人)と同じくらい、世界一周と体現したこのエルカノをフィーチャーしたく思っていることも影響し、スペインでは世界一周は「マゼラン=エルカノ航海」という形で両者並列で知られています。確かにエルカノの功績も大きいですが、同人が世界一周航海の発起人ではない他、途中マゼラン船団の航海に反抗する反乱を起こしていたりと、偉人として持ち上げるには若干心もとないようです。

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