【メルコスール】結成30年の進展・成果:域内自由化の障壁となっている4つの要素とは?(まとめ)

地域統合

メルコスールは結成から30年以上が経っていますが、設立条約(アスンシオン条約)で掲げられた目標(単一市場・関税同盟の結成)が達成された状況とは言えません。南米地域の政治的特色(実現可能性よりまずは政治的コミットの傾向など)も相まって、実現ができていないことは多いです。

停滞気味に感じられる一方で、少しずつではあるものの、目標に向けて前に進んでいるとみることもできます。

メルコスールという経済統合体の成果を考える上では、成果を政治的合意や条約などの「制度上の成果」(Resultado Institutional)と、実際の域内貿易額の推移などの「実質的な成果」(Resultado Real)に分けて見ることができます。

①「制度上の成果」も、(ア)域内自由化(域内関税撤廃の動き)と、(イ)対外共通関税(Arancel Externo Común(AEC))の制定 の2つの分野に大きく分けることができます。

本記事では、「制度上の成果」のうち、前者の「域内自由化(域内関税撤廃の動き)」における進展・成果を、4つの要素に分解して見ていきたいと思います。

なお、本記事は以下の記事の続きになります。

域内自由化にとっての障壁とは

「関税同盟」の結成のための重要な条件の一つが、加盟国からの輸出品に課される関税を撤廃することです。

現在までに、大部分の商品の域内関税障壁は撤廃されたと言えます。しかしながら、引き続き次の域内自由貿易にとっての障壁が残っています

それは、(1)関税撤廃の例外(2)非関税障壁(Barreras No Arancelarias(BNA))(3)自国産業保護措置(4)サービス分野の自由化の制限 です。

1 関税撤廃の例外

自動車と砂糖は、メルコスール創設以来の自由化の例外品目となっています。

特に自動車産業の自由化はメルコスール結成当初から取り組まれてきたもので、具体的な期限を定めた政治的なコミットは多く見られたものの、大きな進展がないのが現状です。

メルコスールの自動車交渉については以下の記事をご参照いただければ幸いです。

なお、砂糖については、自動車と同じく自由化の例外とされていますが、こちらは自動車ほど活発な交渉が行われていないようで、そのためあまり進展も見られていないものと考えられます。「ラテン・アメリカおよびカリブ統合研究所(Instituto para la Integración de América Latina y el Caribe(INTAL))」のlos informes MERCOSURにおいても、あまり説明がされていません。

2 非関税障壁(Barreras No Arancelarias)

二つ目に紹介する域内自由化の障壁は、残存する非関税障壁(Barreras No Arancelarias(BNA) / Restricciones No Arancelarias(RNA))です。

中でも、貿易を抑制する効果のあるアルゼンチンの「非自動輸入許可」制度(régimen de Licencia No Automática (LNA) de importación)が維持されていることが特筆できます。

メルコスールのBNAについての詳細は以下の記事にて扱っています。

3 貿易救済措置(Medidas de defensa comercial)

3つ目に紹介するのは、貿易救済措置(Medidas de defensa comercial)です。

貿易救済措置自体は他国からのフェアでない安価商品に対抗するものなど、WTO体制下で妥当性が認められてきたものですが、こうした措置がメルコスール域内(加盟国対加盟国)でも有効であり、主にアルゼンチンとブラジルによって、適用されてきています。

貿易救済措置の詳細は以下の記事にて紹介しています。

4 進まないサービス貿易の自由化

最後に紹介するのは、サービス貿易における自由化なかなか進んでいないという状況です。

2015年12月を期限として掲げられたサービス貿易の自由化達成は、同年を大きく過ぎた現在もなお達成できているとは言えません。

サービス貿易の自由化の詳細については、以下の別記事にて扱っております。

まとめ

1991年のアスンシオン条約から30年以上が経過するメルコスールですが、当初から掲げられている域内自由化の目標は、引き続き目標であり続けていると言えます。

そうした状況は、(1)関税撤廃の例外(2)非関税障壁(Barreras No Arancelarias(BNA))(3)自国産業保護措置(4)サービス分野の自由化の制限 の4つの側面からみることができます。

停滞し続けているとも言えるメルコスールの自由化ですが、ラテン・アメリカではウナスール(UNASUR)のように解散状態となってしまうような統合体がある中で、なんとか前を向いて継続されている南米の貴重な統合体であると考えます。

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