ラテン・アメリカ及びカリブ関連の本まとめ

ラ米研究

本記事では、ラテン・アメリカ及びカリブ地域に関係する本について、簡単な書評とともに、紹介したいと思います。

ラテン・アメリカ及びカリブ関係の本に関心がある方、探している方に、参考になれば幸いです。

古代アメリカ

ラテン・アメリカ関連書物の中で大きなウェイトを持つのが、古代文明です。メソアメリカ及びアンデス文明は、メソポタミア、古代中国文明とともに、4つの「一次文明」(もともと何もないところから出てきた文明)のうち2つを構成します。

古代アメリカ文明の解明のため日本人をはじめとした多くの研究が行われているものの、未だに多くの謎が残っており、その意味でもロマン溢れるラテンアメリカを語る上で魅力的な分野の一つでしょう。

『古代アメリカの比較文明論』(青山和夫、米延仁志、坂井正人、鈴木紀編著)

『古代アメリカの比較文明論』(青山和夫、米延仁志、坂井正人、鈴木紀先生方編著) は、僭越ながら、超大作、高尚過ぎ、示唆深すぎで大変面白い本です。古代メソアメリカ、アンデス文明を深く知りたい方、学術的な見地からきちんと勉強したい方に大変おすすめです。
メソアメリカ及びアンデスの漸進的な謎解明における日本人研究者の方々の大きな貢献を改めて感じられる本でもあります。

本著を読めば、「世界四大文明」と聞いて普通の人が「メソポタミア、エジプト、インダス、古代中国」と答えるとことを、「メソポタミア、古代中国、メソアメリカ、アンデス」と答えることができるでしょう。
知ってる方にはご存じのとおり、「世界四大文明」は戦後に形成された日本特有の文明観であり、実は一次文明(もともと何もないところから独自に出てきた文明)は世界に4つしか誕生せず古代アメリカ文明はその二つを構成します(参考: 『古代アメリカの比較文明論』(青山和夫、米延仁志、坂井正人、鈴木紀先生方編著))。
従って、いわゆる「世界○大文明」というものは学術的かつグローバルに意味のあるものではないということ、それを言うのであればアメリカ2文明を足して「世界6大文明」というべきである、ということを声高に言っていきましょう。

高山智博先生著『アステカ文明の謎』

高山智博先生著『アステカ文明の謎』は、 僭越ながら、アステカ文化の子育てから祭祀までこれでわかる!的なまとまりで、選ばれた若者が1年間後に生贄に捧げられるが1年間あらゆる快楽が許される「100日後に死ぬワニ激ハードモード」みたいなテスカトリポカ神の祭含め、色んな物語が詰まってて面白い本です。

『古代インカ・アンデス不可思議大全』芝崎みゆき著 草思社

芝崎みゆき先生の『古代インカ・アンデス不可思議大全』は、控えめに言っても最高です。
膨大な研究に基づきつつ、漫画でありながら文字ベースの情報量もたっぷり。そして何より、めちゃわかりやすく、ゆるく紹介されていて、インカ・アンデスの魅力を面白くわかりやすく知りたいならまずこれを読みましょう。

大航海時代

増田義郎先生著『大航海時代』

増田義郎先生著『大航海時代』。僭越ながら、この「大航海時代」というセンス抜群のネーミングの名付け親はラテンアメリカ研究の第一人者の増田先生であることをリマインドします。そんな大航海時代や海賊の第一人者が書いた、この時代の激動が描かれた書物です。

増田義郎先生著『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』

増田義郎先生著『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』。僭越ながら、両帝国のVSスペイン+先住民連合軍のバトルの詳細な描写や心理状況が描かれていて、面白かったです。(ちなみに、パナマ通にはコンキスタドール唯一の良心とされることもあるバルボアさんは、本著では他と同じ金の亡者と一蹴されていました。)

メキシコ

ブラジルとともにラテン・アメリカ最大の国とも評されるメキシコ。古代文明を含め、その歴史、文化、政治、そして日本との友好関係も、奥深すぎて語り出したらキリがありません。

漫画メキシコ榎本殖民史『サムライたちのメキシコ』(原作:上野久)

漫画メキシコ榎本殖民史『サムライたちのメキシコ』 は、大先輩であり元同級生のお父さんの上野久さん原作の漫画です。メキシコと日本に関わる方は是非みんな読んでほしい、読んだら日本とメキシコがもっと好きになる、そんな本です。
個人的には、先達の海外移住者が金儲けよりも日本人としての誇りや潔さ、仁をバチバチに見せつけて相手を圧倒する姿が最高にかっこいいです。日本とメキシコのそれぞれの誇りや厚情、涙なしでは読めません。

阿部修二先生著『先住民のメキシコ』

阿部修二先生著『先住民のメキシコ』。 僭越ながら、メキシコ征服後の欲・腐敗の劇場が具体例で描かれていて、先住民の踏み躙りに対する強い怒りが随所に感じらる、非常にアツい本です。 裁判とかいうレベルじゃない損害受けてきた先住民が、盗みとか器物損壊の被害を勇気をもって訴える訴訟事例、なんとも胸に来るものがあります。

『水木しげるの大冒険 幸福になるメキシコ』水木しげる絵 大泉実成文(祥伝社)

メキシコのガイコツ・お面・多神文化をただただ愉快に垣間見ながら旅をした気分になれる旅行記『水木しげるの大冒険 幸福になるメキシコ』(祥伝社)。
妖怪界の権威である巨匠水木しげる氏はメキシコ文化にまでもその関心を拡大されていたようでした。

キューバ

日本でもチェ・ゲバラ・ファンが多いように、キューバは色んな意味で注目を集める存在です。

『フィデル・カストロ自伝 勝利のための戦略 キューバ革命の闘い』

キューバといえばキューバ革命であり、それを率いたフィデル・カストロ・ルス氏は同国及び同革命において最大の存在です。そのフィデル・カストロ氏が書いた自伝なのですが、同氏のIQが高すぎてシエラ・マエストラの戦いが詳細に書かれすぎて本が分厚過ぎています。
この詳細で戦略学の専門書のような本の日本語訳という難業を日本の先生方が成し遂げてくださっており、日本語になっていますので、キューバ、ひいてはラテン・アメリカ及びカリブに関わる方はぜひ一度手にとってみてほしいです。

『わが夫、チェ・ゲバラ』愛と革命の追憶

エルネスト・ゲバラ(通称:チェ・ゲバラ)の妻であるアレイダ・マルチによる追憶。チェ・ゲバラ自身は革命を展開するため訪れていたボリビアで31歳の若さで亡くなっており、自伝的なまとまった書物は残していません。本書では、奥様の視点から、ゲバラの人間的なところがありのまま描かれています。

後藤政子先生著『キューバ現代史』

後藤政子先生著『キューバ現代史』。僭越ながら、要点がわかりやすくまとまっていて、キューバ革命のポイントを知りたい方にとてもおすすめです。あと、フィデル・カストロ氏の自伝を読んで逆にキューバ革命のポイントがわからなくなった方にもおすすめです。

パナマ

パナマはラテン・アメリカの中で最も遅くに独立した、最も「若い」国です。有名なパナマ運河を含めた同国の歴史は様々な研究の対象であり、実は面白い国・分野です。

『パナマ地峡秘史』(ディヴィッド・ハワース先生著)

「蝉めちゃうるさ過ぎてウザいくせに、こいつらなんと聾なんよ。」(参考:『パナマ地峡秘史』におけるディヴィッド・ハワース氏)。え、蝉ってあんなうるさいのき耳聞こえんの!?蝉はさておき、この本、最高に面白いです。
パナマの先住民、征服者唯一の良心としてのバスコ・ヌーニェス・デ・バルボア、ゴールドラッシュからのパナマ鉄道、パナマ運河と米国とコロンビアからのパナマの分離、その後の米国からの独立と、パナマをめぐる様々な論点が最高に面白く読めます。非常に突っ込んだ研究に裏打ちされているので面白い、そんな感じです。訳された先生も偉業すぎました。

旅・生活・文化

『アンデスを越えた日本人』(向一陽先生著)

「アンデスを越えた日本人」(向一陽先生著)。 僭越ながら、アマゾンの日本人「ゴム移住者」の波瀾万丈の移住人生を聴き出しつつ、奥アマゾンのディープすぎる冒険の臨場感が溢れまくっています。 アマゾンでも日本人の先達の誠実さによる信頼の恩恵が受けられること、本当に頭が下がるしかないです。

ラテンアメリカ楽器紀行(山本紀夫著)

ラテンアメリカを楽器という切り口でまとめるべくラテンアメリカ中を歩いて研究された成果を写真とともに読むことができるありがたい本です。ラテンアメリカ原産の楽器は、気鳴楽器を中心に、ケーナとかサンポーニャとかハンディなもの以外にも、カーニャやクラリンみたいに持つだけで大変そうなめちゃ長い利便性や合理性は度返しした楽器が色々あります。そんな奥深い世界を感じられる本です。
同著を参考に作成したラテンアメリカにある楽器のイメージを掴むための記事は以下になります。

終わりに

ラテンアメリカ関連の興味深い書物は無数にありまして、本ページで紹介するものはほんの一部ですが、少しでも参考になれば幸いです。

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