発展途上国にとっての経済統合の意義は?【メリット・デメリット】

地域統合

本記事では、発展途上国にとっての経済統合の意義、メリット・デメリットは何かをみていきたいと思います。

以下の記事では、経済統合がその加盟国や世界全体に与え得る利益を紹介しました。

一方で、国際的な競争力が強くない発展途上国にとって、経済統合の形成は果たして利益になるのでしょうか

発展途上国にとっての自由貿易と保護主義

成長期における保護主義

第二次世界大戦以後、世界のグローバル化と市場開放の動きは加速し、本日では保護主義的な思想は避けるべきものという考え方が支配的です。実際に、GATT(General Agreement on Trade and Tariffs)と、その後継となるWTO(World Trade Organization)は自由貿易のための様々なルールを敷いてきました。トランプ政権、BREXITなどで見られる保護主義的な動きは国際社会に大きなインパクトを与えましたが、それでもさらなる市場開放への圧力は大きくあり続けています

しかしながら、国際的な競争力の弱い発展途上国の場合、その成長を実現するためには一定の自国産業保護政策が必要であると考えられています。その必要性は、ハジュン・チャン(2003)が関税の推移を歴史的に分析することで示しており、その分析によれば、現在の全ての先進国は、その成長期に、保護主義的な政策を取ってきました

例えば、イギリスはその羊毛産業を国策として保護してきましたし、自由貿易で今日の覇権をとったアメリカは19世紀初頭から1945年まで、最も高い対外関税を維持していた国の一つでした。一方で、今日の発展途上国がかけている対外関税の値は、主要な先進国がかつてかけていた対外関税の値と比較すると、生産性のギャップを考慮すればかなり控えめなものです(チャン(2003: 22))。

今日の発展途上国の関税のレベルは?

そうでありながら、現実には、発展途上国が関税を引き上げることに対し温かい目が向けられることはあまりないようです。

例えば、途上国を中立的な立場で支援できるはずの世界銀行は、現在の発展途上国のかける関税の平均値は現在の先進国が歴史的にかけてきた関税の値よりも高いと、状況を表面的にしか分析しておらず(チャン(2030: 21))、途上国を含むWTOの加盟国は政府の干渉が制限されたルールを守る必要があると述べています。また、IMF(International Monetary Bank)は、完全な自由貿易推進の立場をとっています。

結論としては、歴史的に見れば、現在の発展途上国がその開発(成長)を推進するためには、今以上に高い水準の保護主義的政策をとるべきであると考えられますが、多くの国がそうしていません。そうしていないのは、そうした考えから目を背けているか、やろうとしてもうまくできないか、または純粋に自由貿易を信じているか、のいずれかでしょう。

発展途上国にとっての関税同盟

経済面の意義

上記の議論を踏まえると、経済統合の一つの形である関税同盟は、自由貿易と保護主義の双方のメリットを享受しようとするやり方に思えます。つまり、クーパー・マッセル(1965)の研究で述べられているように、関税同盟は、それにより「規模の経済」と産業開発の双方を得られる手段であると考えられます。

政治・外交面の意義

また、発展途上国にとっては、経済統合が与える経済的効果のみでなく政治的・外交的効果も重要性が高いことも考慮にいれなければならないでしょう。

まず、統合により、加盟国間の連携が維持強化できると考えられます。実際、EUの前身であるEEC(欧州経済共同体)が形成された主要な目的が、歴史的に常に対立し合っていたフランスとドイツの調和の維持であったことはよく知られています。

次に、統合により複数の国が力を合わせることで、それらの国が国際舞台での影響力を高めることができると考えられます。一カ国のみでは先進国との力の差が大きい途上国にとっては特に、国際関係におけるこうした政治的効果を得たいと考えることは自然なことであると言えます。
なお、上記の効果を得るためには、加盟国間の政治的な調和が維持されているということが前提条件となります。

まとめ

発展途上国も、「規模の経済」へのアクセスとそれにより期待できる競争力の強化などの自由貿易のメリットを得るべく、経済統合を追求します。

一方で、現在の主要な先進国はその成長期に保護主義的政策をとっており、発展途上国には自国産業保護の必要性が認められます。現在の先進国のかつての関税水準と実質的に比べると、現在の発展途上国の関税水準は決して高くありませんが、ほとんどの国にとってさらなる保護主義の推進は選択されないか、困難なのが現状です。

その意味で、関税同盟は自由貿易と保護主義の双方のメリットを一定程度享受するための手段であると言えます。発展途上国にとって、関税同盟の経済面の意義に加え、加盟国間の強調や国際的なプレゼンス増大といった政治・外交面の意義も重要です。

参考文献

・Cooper, C.A. y Massell, B.F. (1965), “Toward A General Theory of Customs Unions for Developing Countries”: 462–476.

・Ha-Joon Chang (2003), “Kicking Away the Ladder: The “Real” History of Free Trade”, Foreign Policy In Focus, Silver City, NM: Interhemispheric Resource Center.

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