結成30年以上を迎えるメルコスールですが、その設立条約で掲げられた目標に向けてはまだまだ道半ばです。
その成果を考える上では、①政治的合意に基づくルールが整備されていくという「制度上の成果(resultados institucionales)」と、②実際の貿易量などの「実質的な成果(resultados reales)」(=数字上の成果)に分けることができそうです。
本記事では、後者の「実質的な成果」を構成する要素をまとめていきたいと思います。
前者の「制度上の成果」については以下の記事でまとめています。
実質的成果の構成要素
メルコスールの「実質的成果」を測っていく上で、これから以下の4つの要素を順にみていきたいと思います。これらが全て肯定されれば、メルコスールは、たとえ制度上難ありでも、実質的な数字では結果を出しているということができそうです。
1 域内自由化により域内輸出が促進されているか
2 対外共通関税の設定により域内輸入が促進されているか
3 海外直接投資を呼び込めているか
4 貿易の「質」が向上したか
1 域内自由化におり域内輸出が促進されているか
域内自由化が進むことで、域内輸出が促進されるはず、と考えられます。
これについて、以下の記事で見ていった結論は、域内輸出が促進されている状況はあまり確認できないというものでした。域内自由化のための制度上の整備が不完全な状態が、実際の数字にも反映されている結果となりました。
2 対外共通関税により域内輸入が促進されているか
対外共通関税(AEC)を設定することで、域外からの輸入が抑制され、域内(加盟国間)の輸入が促進されると考えられます。
これについて、以下の記事で見ていった結論としては、前項同様、域内輸入が促進されている状況はあまり確認できませんでした。これも例外多数のAECの現状を映し出すものであったと考えます。
3 海外直接投資を呼び込めているか
メルコスールへの海外直接投資(IED)については、以下の記事で簡単に見ていきました。
単純な数字上は、メルコスールへのIEDは増加していると言えました。一方で、これは多くの地域・国でも経験していることでメルコスール特有のことではないとも言えます。
4 貿易の「質」は向上したか
貿易の「質」が向上したかについては、以下の記事でみていきました。
そこでみていった分析の結論は、メルコスールは加盟国の貿易の「質」向上に一定程度寄与したということができそう、というものでした。
まとめ
本記事では、メルコスールの実質的な成果を4つの要素ごとに見ていきました。
結論としては、一部貿易の「質」の議論のようにポジティブな結果も見られたものの、域内貿易(輸出入)が促進されていることを示すデータ結果は得られませんでした。
自由化・AECの例外が残存し続けるなど、制度面の整備が進んでいないことを「制度上の成果」の結論としましたが、「実質的な成果」分析も、それに寄り添う結論となり、やはりメルコスールは目標に向けてまだまだ発展途上であるということができそうです。
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