【メルコスール】結成30年:サービス貿易の自由化の進展は?

地域統合

結成30年以上を迎えているメルコスールですが、その設立条約で掲げられた単一市場・関税同盟の結成は引き続き目標であり続けています

本記事では、設立条約の「アスンシオン条約」(1991年)とその後の「サービス貿易に関するモンテビデオ条約」(2005年)で掲げられているサービス貿易の自由化の進展具合について、制度や政治的合意などの面から見て行きたいと思います。

2015年までの自由化を掲げたモンテビデオ議定書

2005年12月、『サービス貿易に関するモンテビデオ議定書(Protocolo de Montevideo sobre Comercio de Servicios (Decisión CMC Nº 13/97))』が発効しました。同議定書はWTO GATS( サービスの貿易に関する一般協定)に基づき、域内のサービス貿易の自由化を10年以内、すなわち2015年12月までに達成するとしています(モンテビデオ議定書第19条)。

そうして具体的な期限とともに掲げられたサービス貿易自由化を進めるため、2008年には、「メルコスールにおけるサービス貿易自由化計画の深化のためのアクション・プラン(“Plan de Acción para la Profundización del Programa de Liberalización del Comercio de Sercvicios en el MERCOSUR”) に署名がされ、自由化のためのクロノロジーが設定されました(BID – INTAL, 2010)。

引き続き自由化に向け道半ば

しかしながら、メルコスールのその他の自由化の目標と同様に、2015年までの期限はあまり重視されていないようで、結成30年以上がたった現在も、このサービス貿易の自由化が実現できているとは言えません

実際、メルコスール公式HPにおける結成30周年の成果のうちサービス貿易自由化について掲載されたページ(2021年10月。以下引用)では、「加盟国は『サービスに関するモンテビデオ議定書』を通じサービス市場を段階的に統合することに合意した」とされており、「10年以内」の期限には触れられていないことに加え、トーンも弱気になっています。

https://www.mercosur.int/logro-7-expansion-del-comercio-de-servicios/

同ページからは、第7回の交渉ラウンドが行われ、サービス部門を含む12セクターで政治的コミットが進んだ様子がうかがえるにとどまります。第7回ラウンドが開催されたのは2009年であり、そこから2015年まで、また現在までの目立った進展は無いように見受けられます。

一方で、次回の第8回ラウンドの開催は2020年のGMC決議No.44にて呼びかけられており、そこでは国内規定、郵便サービス、通信に関するモンテビデオ条約の新たな付属書の追加や同条約の改定などについて議論するとされています。

また、2021年には、加盟国間のよりオープンで安全な電子商取引(ネットショッピングなど)の環境づくりのための「電子商取引に関する議定書(Protocolo de Comercio Electrónico del MERCOSUR)」に署名がされており、ゆっくりではあるも前に向かって進んでいる様子も伺えます。

(参考)SICEホームページ メルコスールCMC決議
http://www.sice.oas.org/trade/mrcsrs/decisions/indice.asp

まとめ

関税撤廃の例外、非関税障壁、貿易救済措置に加え、サービス貿易の自由化が進まないことも、メルコスールの自由貿易が達成できているとは言えないとされる要因の一つです。サービス貿易においても、政治的な合意(達成期限など)があまり重視されないメルコスール交渉の特徴が見られます。

一方で、かなり長い目で見ると、少しずつ前進しているのもメルコスール交渉全般でいえることで、ラテンアメリカにおける貴重なグループとして引き続き取り組んでいる様子も見受けられます。

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