ラテン・アメリカ、あるいは中南米諸国の国の数はいくつあるのでしょうか。
これにストレートに答える記事があまりなさそうなので、本記事ではその疑問に正確に答えていきたいと思います。
そもそも ラテン・アメリカとは?
広く含めたい場合は「ラテン・アメリカ及びカリブ」と言うのが無難
ラテン・アメリカまたは中南米を構成する国の数を答える上で、そもそも「ラテン・アメリカ」、あるいは「中南米」がどういった範囲をカバーするのかを知る必要があります。
このそもそも論である「ラテン・アメリカとは?」ということは、実は多くのラテン・アメリカ研究者がそれ単体で議論ができるテーマであるのですが、本記事では簡潔に、以下のようにまとめておきたいと思います。
・狭義(狭い範囲)のラテン・アメリカ:旧宗主国がスペイン・ポルトガルである(すなわち公用語がスペイン語またはポルトガル語である)アメリカ大陸及びカリブの国々。
(※これに旧宗主国をフランスとする国(ハイチのみ)を加える説もある。)
・広義(広い範囲)のラテン・アメリカ:北アメリカ(アメリカ合衆国及びカナダ)を除く西半球(アメリカ大陸及びカリブ)の全ての国々。この場合、スペイン語、ポルトガル語、フランス語の国に加え、旧宗主国をイギリスとする国々やオランダとする国も含まれる。
狭義のラテン・アメリカの場合、キューバ、ドミニカ共和国を除くカリブ海の島嶼国はこれに含まれず、漏れてしまっている形となります。さらには、中米のベリース(英語)や、南米のガイアナ(英語)、スリナム(オランダ語)も漏れる形となります。一方で、これらの狭義のラテン・アメリカから漏れている国々も全てカリブ海に浮かんでいる、あるいはカリブ海を向いている、ということで、「ラテン・アメリカおよびカリブ」と言えば、ラテン・アメリカを狭義に捉えようが広義に捉えようが、北米を除く西半球の独立国は全て含めることができることになります。
広いラテン・アメリカを含める政治枠組みである「CELAC(セラック)」は、「(西語)Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños(日本語:ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)」という形で、ラテン・アメリカを狭義に捉えても広義に捉えても大丈夫なような名称となっています。
同じく「中南米及びカリブ」も正しい
一方、中米、南米、中南米、という場合は、旧宗主国がどこであるか等は関係がなく、それぞれの大陸に属しているかが問題になります。例えば「南米」には、アルゼンチンやブラジルなどのスペイン語圏、ポルトガル語圏の国は当然のこと、ガイアナ、スリナム、独立国であるかを問わない場合は仏領ギアナもこれに含まれるでしょう。
他方で、「中南米」と言う場合、カリブ諸国の国々は基本的にこれに含まれないので、それらの国も含める場合は「中南米及びカリブ」と言えばOKです。
なお、メキシコは「北米」に含まれ、「中米」と言う場合のこれには含まれないというのが正確なところです。しかしながら、「中米(Central America)」とは別に「ミドルアメリカ(Middle Amrica)」という呼び名の区分にはメキシコも含まれ、「中南米」という場合の「中」はこの「ミドルアメリカ」を指しているため、「中南米」にもメキシコは含まれる、という考え方が学術的には一般的であるようです。
ラテン・アメリカ諸国の数は?
それでは本題の国数ですが、結論から言えば、ラテン・アメリカの国数は、狭義では19か国、広義では33か国、ということになります。
したがって、旧宗主国をスペイン・ポルトガルとするアメリカ大陸及びカリブの独立国の数は19か国、その他フランス、イギリス、オランダを旧宗主国とする独立国の数は33か国です。
・ラテンアメリカ(狭義)国数:19か国(注:ハイチを加えると20か国)
・ラテンアメリカ(広義)国数:33か国
ちなみに、地理的な範囲で見ると、南米は12か国、中米(メキシコを含むミドルアメリカ)は8か国、カリブは13か国になります。
これを図で表すと、以下のような形となります。
前述の、ラテンアメリカ・カリブ諸国が広く含まれるCELACの構成国も33か国です。(2020年以降のブラジルなど、参加資格が一時的に停止する場合はあります。)
なお、中南米には、非独立地域(欧米が引き続き領有等する地域)が未だ残っており、その地域は14以箇所あります。例えば、南米北部にある仏領ギアナもフランスの一部で、独立国ではありません。
これらの地域は独立国ではありませんので、「国数」を言うときにはこれらをカウントしません。
まとめ
本記事では、ラテン・アメリカを構成する国の数はいくつか、ということを見ていきました。
その上で、まず「ラテン・アメリカ」がどこまでの範囲をカバーするのかを理解し、それには狭義と広義があることを見た上で、それぞれの場合の国数を見ていきました。
狭義の、あるいは厳密な意味でのラテンアメリカ、すなわち旧宗主国をスペインまたはポルトガルである国々に限定した場合、その国数は19か国です(旧仏領のハイチを含めると20か国。)。
一方で、広義にラテンアメリカを捉えた場合、その数は33か国です。
したがって、ラテンアメリカの国数は、捉え方によって変わり、それは意味を限定すれば19か国or20か国、広く捉えたら33か国であると言えます。
主な参考文献
・物語ラテン・アメリカの歴史 増田義郎著(中公新書)
・ラテンアメリカの歴史(世界史リブリット)高橋均著(山川出版社)
・ラテンアメリカ五〇〇年 歴史のトルソー 清水透著 (岩波現代文庫)
Potcastもやっています!
ちなみに、「ラテン・アメリカとは?」というテーマは、多くのラテン・アメリカ研究者がそれぞれ検討する、概念・言葉が生まれた背後の歴史などそれ自体興味深い議題です。
これをゆるく扱ったラジオもありますので、関心のある方は聞き流しやながら聞きをしていただければと思います。
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