マクドナルドといえば、世界中にあるアメリカの超巨大外食チェーンですが、南米ボリビアにはその店舗が一つもありません。
ボリビアでは、2002年に、展開していた8店舗全て閉鎖する形で、同世界的チェーンは同国から撤退しました。一方で、同じハンバーガーチェーン弟分のバーガーキングは成功を収めています。
本記事では、マクドナルドの倒産と、バーガーキングが残る理由について見ていきたいと思います。
マクドナルドの世界展開
マクドナルドは、その公式HPによれば、100以上の国と地域で40,000店舗以上(2021年11月末時点)を超えるレストランビジネスを展開している世界トップクラスの企業です。
展開する国・地域数は、他のソースも踏まえれば120弱の国・地域のようで、世界が196カ国だとすると、80カ国弱にはマクドナルドがない、ということになります。
マクドナルドが潰れた唯一の国
マクドナルドのない国々は、マクドナルドが進出そのものをしていないケースがほとんどだといえます。その理由は、紛争等の不安定な国内情勢、多国籍企業の活動への規制がある、経済規模(購買力)が小さすぎる等、さまざまあるものと思いますが、ボリビアに関しては、マクドナルドは1997年11月から進出し、同国内に8店舗(首都ラパスに3店舗、経済都市サンタクルスに3店舗、コチャバンバに2店舗)展開したものの、業績悪化により2002年11月に潰れてしまいました。
天下のマクドナルドが勝機を見込んで展開したにも関わらず、その目論みが外れ倒産し、撤退したことは、国内外で大きな注目を集めました。
2017年10月12日付(2019年更新)ヴァングアルダ紙によれば、マクドナルドが進出したものの業績不振で倒産、撤退したのは、ボリビアが唯一のケースです。
マクドナルドが潰れた理由
マクドナルドがボリビアで売れなかった理由は様々なところで考察がされており、それを一言でまとめると、「美味しい地元メシが安く食べられるのに、高額で人工的なマクドナルドを好むボリビア人が少なく、増えなかった。」ということになると思います。
マクドナルド倒産の理由の考察でよく引用されるドキュメンタリー『Por qué quebró Mcdonals en Bolivia』が、1時間かけて述べているのは、主として上記の一文です。ボリビアの豊かで多様な食文化、サルテーニャをはじめとしたボリビア版ファスト・フードの強さを前に、マクドナルドが入り込む隙を与えなかったのだろう、ということです。少し付け加えると、ボリビア人のスローライフと、食事を急いで行う考え方が合わなかっただろうということも述べられています。
サルテーニャは世界で最も美味いファストフードであり(筆者独断)、上記は真実だろうと思います。現地に合わせボリビア・マクドナルド(ロベルト・ウドレル(Roberto Udler)オーナー(当時))が考案したサルテーニャ・セットが実現しなかったことはサルテーニャ・ファンにとっては悔やまれます。
また、豊かさ、おいしさに加え、屋台の地元メシが「安さ」と「早さ」の双方で競争力を持っているということが大きいだろうとも思います。25ボリビアーノ(現地通過。大体3.6ドル)のマクドナルドセットは、10ボリ(大体1.5ドル)で完全な地元メシでお腹いっぱいになれる世界では大変高価な食事だろう、ということです。この種の地元の屋台は大体非正規で、税金社会保障等々を納めていないケースが多いので必然的に安いという面もあります。
上記の理由は、他の地元のメシがうまく、牧歌的な国であれば、どこでも起こり得そうな気もし、もう少し突っ込んだ考察をしようとしている情報源にも複数当たったのですが、何か他の決定的な理由があるということではなさそうです。他国に無いボリビアの特殊性を挙げるなら、やはりうますぎるサルテーニャであり、様々な考察でサルテーニャが引き合いに出されることは適当だろうと思います。
なぜバーガーキングは残るのか
マクドナルド倒産後に入ってきたのは、米国ハンバーガーチェーンの弟分のバーガーキングでした。同社は同じようなメニューと価格帯で勝負するわけですが、これは現在も残り続け、成功を収めています。「ボリビアの豊かで安い食>アメリカ式ファストフード」の図式であれば、バーガーキングも大体同じだろうと思うのですが、マクドナルドの失敗に学んでうまくやったのだろうといえます。(ちなみに筆者もサンタクルス滞在時代家の近くのバーガーキングに行くのが大きな楽しみでした。セットで25ボリであったと記憶します。)
バーガーキング・ボリビア(ボリビアン・フーズ社)のオーナーはサムエル・ドリア・メディナ氏で、同氏は2014年の大統領選候補者であり、国民団結戦線(Frente de Unidad Nacional)党党首です。同氏の政治力を含めた経営力が、バーガーキングの成功に関係しているだろうといえます。なお、同氏は、同じくボリビアで展開しているファストフードのサブウェイ(Subway)のオーナーでもあります。
まとめ
本記事ではマクドナルドが倒産した唯一の事例を見ていきました。これはボリビアの地元の食文化を天下のマクドナルドが崩せなかった興味深い例であり、同時にボリビア食文化にとっては誇らしいものでもあろうと思います。そして、そこにボリビアのお手軽フードであるサルテーニャが果たす役割は大きいだろうと考えます。
マクドナルドが倒産し、バーガーキングが成功を続けていることは大変興味深いですが、これはマクドナルドほど偏見のなかったバーガーキングが、兄貴分の失敗に学び、また政治力もつけつつ、うまくやっている結果だろうと思います。
【主な参考文献】
・La Vanguardia: Las razones por las que Bolivia es el único país donde ha quebrado McDonald’s (12/10/2017 – Actualizado 17/09/2019)
・Documental “Por qué quebró McDonald’s en Bolivia?”
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