米国主催の第9回米州サミットが閉幕【その成果と課題は?】

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2022年6月、第9回米州サミット(Cumbres de las Americas)が米国ロサンゼルスにおいて開催され(コロナにより予定より1年延期して開催)、米国からはバイデン大統領が出席しました。

米州サミットは西半球(Hemisferio Occidental)の首脳級が出席する、地理的には世界の中でも最大規模の地域対話枠組みであるといえますが、日本ではあまりよく知られていないようにも思います。

本記事では、そもそも米州サミットとは?ということから、4年ぶりに開催された第9回サミットの成果と課題について、ざっくりと見ていきたいと思います。

そもそも「米州サミット」とは?

米州サミットは、米州*の国々の首脳級会合で、米州機構(英:OAS、西:OEA)の枠組みで開催されます。1994年の第1回サミット(於米国)から、大体3年に1度のペースで開催されてきています。
*米州とは、アメリカ大陸全体を指す言葉で、アメリカ、汎米、パン・アメリカ、西半球なども同義語で使われます。カリブもこれに含められることがあります。

同サミットは、米州が抱える問題や課題について検討・協議し、参加国の安全や発展の強化につなげることを目的としています。

このサミットの最大の特徴はラテンアメリカ・カリブ諸国に加え米国(アメリカ合衆国)とカナダが含まれていることで、これらの北米諸国を含めない最大の政治的対話枠組みとしてはCELAC(ラテンアメリカ・カリブ海諸国共同体)が存在しています。

第9回米州サミット 成果と課題まとめ

第9回米州サミットは、2022年6月6日から5日間の日程で、米国が主催国となり、カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されました。ロサンゼルスは米国第二の大都市で、最大のスペイン語話者を抱える都市として知られています。サミットのテーマは「持続可能で、強靭で、公平な未来の構築」(”Construyendo un futuro sostenible, resiliente y equitativo”)でした。

米国が主催国を務め、バイデン大統領が主催国としてきちんと首脳会合と関連行事(メシなど)を執り行ったことは、前回サミット(ペルー主催)において半ばドタキャンしたトランプ大統領とは一線を画するものでした。

成果

移民問題に関する「ロサンゼルス合意(Acuerdo de Los Angeles)」に署名がされ、増大する移民問題に歯止めをかけるために米州が協力して取り組むことに合意がされました。

バイデン大統領は同合意の4つの柱として、①安定と支援、②合法移民の受入れと保護、③国境問題における人道支援、④緊急事態への対応策を挙げ、移民に対し適切で協調した対応を取っていくことを述べました。

バイデン政権としては、トランプ前大統領の「壁の建設」に象徴される苛烈な移民対策とそれにより生じたラ米諸国との不和を念頭に、協調性があり寛容な移民政策を打ち出すことでリーダーシップを発揮しようとした形かと思います。

課題

一方で、今次のサミットで最も注目されたのは、その成果よりも、米州諸国の立場の違いと分裂でした。主催国米国が民主主義と人権状況を理由にキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを排除し、これに左派政権の国々が反対しました。

メキシコのロペス・オブラドール大統領(通称アムロ)は、「アメリカの全ての国が招待されていないので、私はサミットには出席しない。」と、欠席の意向を表明し、実際に欠席しました。同様に、ボリビアのルイス・アルセ大統領、ホンジュラスのシオラマ・カストロ大統領も欠席(ボイコット)しました。

グアテマラのジャマティ大統領は、米国政府長官がグアテマラのポラス検事総長再任を汚職呼ばわりしたことなどを理由に欠席、ウルグアイのラカジェ・ポー大統領は、コロナ陽性になったとして欠席しました。エルサルバドルのブケレ大統領も欠席しました。

米国の一部の国の排除に不服ながら出席した国も、壇上でその考えを述べました。アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は、出席するバイデン大統領に対し、「決定的に、我々は別の形の米州サミットを望んでいた。不在国の沈黙は我々に説明を要求する。このようなことが二度と起こらないよう、サミット主催国は大陸のメンバー国の出席を承認する権利は持たないことを明らかにしたい。」と述べるなど、3カ国の排除を明確批判し、またキューバやベネズエラに対する経済制裁についても批判しました。

チリのガブリエル・ボリッチ大統領も、「(課題を話し合うには)排除があってはならない。ここには全ての国がいなければならないが、全ての国はいない。キューバ、ベネズエラ、ニカラグアの排除は、私は好きではない。」と述べました。その他、ベリーズ、バハマ、バルバドス、アンティグア・バーブーダも同様の批判を行いました。

同様の文脈で、米州機構(OAS)の再建の必要性が痛烈に述べられました。アルゼンチン・フェルナンデス大統領は、OASが引き続き信頼を得て対話の場となるためには、その指導者が全員入れ替えられる形で再建なければならないと述べました。

その後

サミットの後、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、バイデン大統領をCELAC会合(すべてのラテンアメリカ・カリブ諸国が含まれる)に招待する意向を表明し、バイデン大統領もとりあえずテイクノイートしたようです。

バイデン大統領は、今次サミットにおける複数国のボイコットについて、特に気にしていない旨をCNNインタビューで述べていました。

立場の違いが改めて表面化したものの、米国主催の第9回サミットは成果としての宣言が採択され、大きな混乱なく閉幕しました。次回サミットは概ね3年後にまた開催されるものと思われます。

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