お子さんのいらっしゃる海外赴任者にとって最大の悩みの種といえるのがお子さんの教育をどうするか、ということかと思います。
その中で、赴任先の国に日本人学校がある場合は、お子さんに通わせる教育機関のオプションとしては①日本人学校、②インターナショナル・スクール、③現地校の大きく3つのが存在し、いずれに通わせるかを悩むことがあるかと思います。
あるいは、今後海外赴任の予定はあるが、日本人学校がある国とない国の何が良いのか、ということを悩むかもしれません。
本記事では、そうした検討の一つとして、①そもそも海外にある日本人学校とはなんなのか、どういうところなのか、また②補習授業校とはなんなのか、という基本的なことを紹介した上で、③日本人学校出身者として、その特徴を紹介したいと思います。
日本人学校とは?
日本の公立校とほぼ同じ
日本人学校は、「国内の小学校、中学校又は高等学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする、全日制の教育施設」です(文部科学省HP)。
その運営主体については、「一般に現地の日本人会等が主体となって設立され、その運営は日本人会等や進出企業の代表者、保護者の代表などからなる学校運営委員会によって行われています。」(文部科学省HP)
つまりは、日本人学校は海外にある日本の公立校のようなイメージで、日本の学校と同じような教育カリキュラムで授業などが行われ、日本の学校を卒業した場合と同じように次の教育機関(中学なり高校なり)への入学資格が認められます。したがって、そうした学校を認定するのは文部科学大臣で、日本の行政府における管轄は、国内の教育機関同様、文部科学省になります。(後の紹介する補修授業校は、外務大臣が指定することになっています。)
運営主体は現地の日本人関連団体
本人学校の運営主体は現地の日本人会などが中心となって行われ、例えば日本人会は企業などの駐在員や、現地の日本人(在留邦人)が主たる構成メンバーであることが多いです。
一方、日本の公立学校は地方自治体の教育委員会が運営主体になるものと思い、教育委員会の構成員は地方自治体によって異なりますが、地域の教育畑の人がなることも多いと思われます。
中南米にある日本人学校は?
その数は、本記事執筆時点では、「世界49カ国・1地域に94校が設置されており、約1万6千人が学んでいます」とあり、ラテンアメリカでは10カ国(アルゼンチン、コスタリカ、コロンビア、チリ、パナマ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ)に合計14校の日本人学校が存在します。
日本人学校は、これらの国のうち、メキシコとブラジルにのみ計3校存在しており、それ以外の国は首都に1校存在しています。詳細及び最新情報は下記文部科学省HP御参照です。(なお、筆者はこのうちパラグアイにあるアスンシオン日本人学校出身者です。)
補習授業校とは?
政府が補助する日本語教育塾?
海外にある補習授業校は、「現地校、インターナショナル・スクールなどに通学している日本人の児童生徒に対して、授業のない土曜日、日曜日や放課後等の授業のない時間に、国内の教科書を用いつつ小・中学校の国語、算数など一部の教科について授業を行い、」所定の外務省の基準に適合した、「外務大臣の指定を受けた在外教育施設」です。(外務省HP)
したがって、全日制の日本人学校と異なり、土日や放課後に開講し、メインの教育機関としては現地校やインターナショナル・スクールに通っている日本人の小中学生向けに日本の教育を行うものです。日本政府の補助がある海外の小中学生向けの塾みたいなイメージでしょうか。
中南米においては、進出企業数の減少やインターナショナル・スクールへ通う人が増えることなどにより生徒数が少なくなった日本人学校が補習授業校になるケースもあります。一方で、ロンドン補修授業校のように、生徒数が増え続ける日本人学校に併設される形で開校するケースもあります。
補修授業校が満たすべき外務省の基準は、「在外教育施設に対する支援に係る指定等に関する規程」(令和4年外務省告示第303号)(PDF)の第1条に規定する各号の基準であり、例えば利用者に当たる日本人の児童・生徒数はおおむね5人以上とされています。
日本人児童・生徒にとって貴重な存在
土日・放課後のみであっても、日本政府の支援や在留邦人、駐在員の努力などで運営される補習授業校の存在は、日本人児童・生徒にとっては日本の言語や教育、文化を学ぶことのできる貴重な施設であるように思います。筆者は日本人学校も補習授業校も無いところで小中学校にあたる時期に在住した経験がありますが、もしそうした補習授業校があれば、日本人との繋がりが得られてより楽しい生活が送れていただろうな、と思うことがあります。
日本人学校の特徴は?
アスンシオン日本人学校出身者の筆者の個人的経験から独断と偏見で言うと、一例として以下のような特徴を挙げることができると考えています。なお、筆者が通っていた当時の日本人学校の生徒数は40名前後で、1クラスの生徒数多くて5、6人でした。そのアスンシオン日本人学校も、残念ながらその後生徒数が減少し、現在の在校生は20名以下になっているようです。
筆者は日本の公立校と、インターナショナル・スクールに通っていた経験がありますが、今回は基本的に日本の公立校と比較する視点で、特徴を挙げたいと思います。
授業は全て日本語・日本の教育
まず基本として、前述のとおり日本の公立校と授業方針は同じなので、九九の覚え方や、都道府県テストなど、日本の教育と同じです。一方、現地語の授業も週一回ありました。
生徒数が少ない割に施設は結構充実していることも
国によって異なりますが、日本人学校の生徒数は進出企業の数等の影響で変動する一方、文部科学大臣から認定された日本人学校として必要な設備は整えられるところ、生徒1人当たりが享受できる学校の人的・物的リソースは、傾向としては大きいと言えるのではないかと思います。
例えば、サンパウロ日本人学校では、80年代には900名いた生徒数は、令和に入ってからは100名前後に減少しているようです(ブラジル日報。2022年7月)。一方で、これを受けて学校の敷地面積を1/9に縮小する、ということには簡単にはならないでしょうし、同様に、学校を維持するための職員を柔軟に1/9にする、ということにはならないでしょう。その場合、広々としたグラウンドでいつでもサッカーの試合ができるかもしれませんし、先生はほぼマンツーマンの形で生徒を指導できるかもしれません。
これは日本国内の人口が激減している地区でも見られる減少かもしれませんが、日本人学校の場合、各国の首都や首都に準ずる大都市に住みながら、そうした教育環境に身を置くことができるかも、という点は、特徴の一つとして考えられるように思います。
先生のやる気が高い
これも当然ケースバイケースではありますが、途上国を含め、海外に出る、という決断をした先生ですから、やる気が高かったり、オープン・マインデッドな先生が多い傾向にあるよう言われることがあります。
異国の風土・文化を学ぶ機会も多い
日本文化が中心ではありつつ、現地の風土・文化を学ぶ機会も多いことは、生徒さんの視野を広げたりする意味で非常にポジティブなのではと思います。いわゆる「ゆとり」時間に現地の動植物の研究をしたり、課外活動で現地の名所を訪れたり、他の現地校と交流の機会があったりなどは、なかなか貴重な経験であるように思います。
日本の著名人と交流の機会がある
日本の著名人、スポーツ選手などが外国を訪れる際、現地との交流の一貫で日本人学校の生徒さんと交流する、ということがあったりします。日本人学校があるところの多くは各国の首都又は日本とゆかりの深い都市であり、そうした交流の機会があるというのは、日本の学校、インターナショナル・スクール、現地校のいずれにもない特徴かと思います。
例えば、サッカー元日本代表の武田修宏選手がパラグアイのサッカー・チーム「ルケーニョ(Luqueño)」(青と黄色がチームカラー)に移籍した際、日本人学校の生徒たちは武田選手と一緒にサッカー交流をする、という、贅沢な経験を得ています。
まとめ
本記事では、海外にある日本人向けの教育機関である日本人学校と補習授業校の概要を紹介した上で、筆者の個人的な見解による日本人学校の特徴をいくつか挙げました。
これからお子さんの海外での教育を考える方にとっては、日本人学校とインターナショナル・スクールとの比較や、デリット・デメリットという視点での情報も得たいと思うので、実際に在学した者として、そうした情報も今後掲載していければと思います。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。
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